『十五万枚のつづき』
 閉店時間を過ぎたマンガ喫茶。拓弥が時の経つのも忘れてマンガに読みふけっている。この店のマスター猿渡は手塚治虫フリークで、手塚マンガの好きな若者に熱心に手塚マンガの素晴らしさをレクチャーしてやる。そして、マスターが若者を誘った日本一怪しげな手塚治虫ファンクラブの正体とは。

 マンガ喫茶が舞台です。コンビニの弁当と同じくマンガ喫茶も独自の進化を遂げていて目が離せません。時代の欲求に的確に答えていく、そのスピードとサービス精神にいつも驚かされます。マンガ喫茶、並びにマンガをテーマにした話はシリーズ化するつもりではいるのですが、今のところマンガ喫茶話はまだこれだけです。そして、これは手塚先生へのオマージュとして作りました。手塚治虫先生についての評論はいくつもあります。そして、手塚先生のマンガを舞台化したものもいくつかあります。手塚先生の長篇マンガは脇のエピソードが濃いんです。樹木でいうと枝が幹の太さになっているんです。だから、これをいかに落としていくか、ということがうまくできれば、それなりの舞台化は可能だと思っています。枝が幹のように、というのは例えば浦沢直樹さんの『モンスター』なんかもそうですね。もしかしたら、マンガはそういう物語構造を持っている方が、よりその機能を発揮できるのかもしれません。ま、それはさておき、手塚先生にとりあえず「ありがとうございました」と言っている表現物がないので作ってみました。大友克洋さんの代表作『アキラ』の最後のページに「手塚治先生、ありがとうございました」と書かれていて、涙したくらいです。演劇でも「ありがとうございました」と言いたいがために作ったものです。